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「自立・自尊の埼玉」をモットーに
補助金カットや公共サービスの切り捨て

介護保険利用者の切り捨てを率先して進める県内自治体、県も容認

 昨年から実施された改正介護保険法により大幅な自己負担増が発生しています。改正の中核である「介護予防・日常生活支援総合事業」は“要支援1,2”の“介護者”を市区町村の裁量で介護給付対象から外せる利用者切り捨てのしくみです。この「事業」を積極的に推進した和光市では“要支援者”の4割にあたる利用者が通所・介護訪問の対象から一方的に“卒業”させられ、利用者から怒りの声が湧きあがりました。
 県内では、和光市と羽生市、吉見町が2015年4月から「事業」の運用を開始、2016年1月から川島町、3月に川越市、飯能市、東松山市、入間市、日高市が運用をはじめます。
 
 

施設の増設はまったなし

 改正介護保険法で特別養護老人ホームの入所資格が要介護3以上に制限され、介護保険から利用者のしめだしが強化されてきました。特別養護老人ホームに入所を希望している待機者は全国で52万3584人、そのうち要介護3以上は34万5233人です。要介護3に満たない約18万人が切り捨てられます。埼玉県の待機者は1万6937人、全国の介護度比率で推計すると約5800人が切り捨てられることになります。(H26.3.25厚生労働省:報道資料)誰もが必要なケアを受けられる施設の整備、県独自の支援はまったなしです。
 
 

埼玉県は介護保険給付も認定率も全国最低

 埼玉県の介護保険第1号給付者(60歳から64歳まで)の年間給付費は19万円、全国最低です。最高の沖縄県31万円とは12万円も開きがあります。特別養護老人ホームをはじめ各種ホームなどの整備率は全国43位、要介護2から5の高齢者の施設利用者数の割合は40位、要支援・要介護の認定率は13.7%で全国最下位です。
 埼玉県の財政規模は日本の都道府県で5位、福祉先進国ノルウェーとおなじくらいの財政規模です。他の県や地域で実現できることがなぜ埼玉県ではできないのでしょうか、
 
 

障害者医療費助成65歳以上を差別

 重度障害者やその家族が安心してくらすための障害者入所施設でも、県内で1300人の待機者がいます。埼玉県の10万人あたりの入所施設利用者数は全国42位と低く、知事も「保護者はできるだけ自分の手で世話を続けたいが、自分が将来亡くなったときにやはり施設が重要だと考えています。国の『画一的に入所施設はつくらない』という方針は適切でないと考えます」と発言しています。
 
 2015年1月から65歳以上で重度障害者になっても、医療費無料制度が適用されなくなりました。腎臓病で週3回の透析を受けなければ生きていけない人にとって、医療費助成がなくなればお金のあるなしで命の保障はありません。しかし、知事は「将来に向けた安定的運営のために、年齢制限撤回は考えていない」と述べました。重度障害者に対するいじめにほかなりません。試算では、年間1万3千人ほどがこの制度から締め出される見込みです。
 
 

国保税は4人家族で36万円にも…

 国保加入者(約3割が65歳以上)の平均年所得は140万円です。一方、国保税は4人家族(所得200万円)で年36万円を超える例もあります。そのため滞納が増え、一方で医療費が増大して、国保財政が窮迫しています。また、国保の都道府県化では、都道府県が市町村の納付金や標準保険料率を決めて徴収するもので、保険料値上げや徴収強化につながります。県は2008年から県単独補助金をカットし、国とともに医療費切捨て路線をすすんでいますが、国保の国負担を現在の25%から1984年当時の50%に戻させるなど、国の悪政の「防波堤」としての役割を果たすべきです。
 
 

生活保護─窓口での申請拒否が横行

 生活保護の申請は、「口頭ではできない」「書類が整わない」などを理由に、窓口での申請拒否が横行しています。県内の生活保護受給世帯は2012年度で6万5千世帯を超え、被保護人員も9万2千人近くになり、保護率は1.28%と年々増え続けています。

福祉事務所と保健所の統廃合

 県の福祉事務所は保健所と一体となった福祉保健総合センターとして県内10カ所ありましたが、4カ所に統合されました。県福祉事務所は町村部の生活保護事務、介護保険関係の事務、特別養護老人ホームなどの福祉施設の整備運営指導事務などを担っています。三芳町は、坂戸市の西部福祉事務所の管轄となりました。坂戸市と三芳町を通う生活保護受給者やケースワーカーの負担は計り知れません。
 保健所も、13保健所11分室あったものが、13保健所に再編され、所沢保健所は狭山分室へ集約されたため事実上廃止されました。所沢市議会では、全会一致で反対の意見書を可決、反対署名も10万筆集め県に要望しましたが、上田知事は強引に強行しました。この時、474人だった保健所職員は12年時点で457人減ってしまいました。
 上田知事はまた、「所沢や越谷などの30万都市は、中核市となって保健所をつくればいい」という主旨の答弁をしていますが、保健所をなくしたうえで、「中核市になればいい」というのは無責任です。

 

病院勤務医・看護師数は全国最下位
県立の医学部(医師養成機関)の設立を

 

県内の医師比率は全国最下位、医師不足で小児、周産期、外科は深刻に

 埼玉県の救急搬送の状況は、受け入れ紹介回数4回以上の事案が全国平均3.6%を上回る8.7%、現場滞在時間30分以上は全国平均4.1%に対し12.5%です。
2013年1月には、久喜市で「医師不足のため処置が困難」「ベッドが満床」などの理由で、県内外の25病院から計36回受け入れを断られた男性が死亡するという痛ましい事件が起きました。 
また10万人あたりの病院病床数は、866.9床、神奈川県に次いで全国で2番目に少ない数です。
 県内の医師は10万人あたり148.6人で、東京都の半分以下、全国最下位です。また看護師、助産師も全国最下位です。なかでも小児科、産婦人科、外科などで、医師不足によって休診せざるをえない深刻な事態も起こっています。
 
 

医師、医療従事者養成のため県立大学に医学部を

 埼玉県の医療従事者数が少ない要因の一つに、医学部の設立が遅かったことがあります。私立の埼玉医科大学が1972年に設立されましたが、いまだに国公立の医学部がありません。私大医学部の学費が高額なため、医療を志す若者が県外の国公立の医学部に流出してしまう要因となっています。
 埼玉県の高齢化率(人口に対する65歳以上の人の割合)は、2012年に22%だったのが、2040年には推計で34.9%となります。これにより、急速な医療・介護のニーズが高まることが予想されます。医師や看護師・助産師など医療従事者を大量に養成し、奨学金制度などで埼玉県内に定着する施策を強めることが求められています。
 2012年12月議会で知事は、県立大学医学部設置について「新設するのであれば、時代の要請と発展性を考えた本格的なものでなければならない。やるときはやります」と述べていますが、医学部創設について強力に国に働きかける必要があります。