民主県政の会ニュース206号

台風19号による埼玉県内の被害拡大
国・自治体は被災者救済に全力を

超大型の台風19号は10月12日から13日にかけて埼玉県を直撃し甚大な被害をもたらしました。こうした大規模な自然災害は今後も繰り返されるのではと心配されます。国や自治体はもちろん、国民一人ひとりが考えなければならない重い課題を残しました。
 
台風19号による埼玉県内の被害は、川の氾濫を始め道路や鉄道、施設・家屋の倒壊や浸水、電気・ガス・水道などのライフライン、農畜産業、スーパーや病院、学校など生活に関わるあらゆる分野に広がっています。元の日常生活を取り戻すのも思うようにすすまない状況です。被害の全貌は未だ把握しきれていません。政府や県、自治体にはあらゆる知恵と力を集めて、国民・県民の命と暮らし最優先の被災者・被災地救済と支援、復旧が求められています。
 
国や自治体は、この未曾有の災害から、今後に生かす教訓と課題を明らかにしていくことが必要です。そのためにも、被災者の声を直接聞き、自然災害への備えについて、識者・専門家から意見を聞き取ること、議会などにおける議論も大事です。
 
<大野知事が被災者救済に決意>
 
被災から10日余りが経過した23日、大野元裕埼玉県知事は定例記者会見で、記者から被災地を訪問して感じたことを問われ「応急措置だけでなく、被災された方の生活を一日も早く元に戻すため、国や市町村と連携しながら対応をはかるとともに、今回の災害を教訓として今後の対応に生かしていきたい」と強い決意を示しました。また緊急避難所以外への避難者について、相談窓口を設けてより良い選択ができるようにする、一度避難しても、そのあと県営住宅を手当てするなど中期的な対応もしていくなど答えました。
 
ニュース206号1面P-1
都幾川の氾濫による東松山の浸水拡大(県ホームページより)
 
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ダムの治水効果は期待薄
嶋津 暉之氏(水源開発問題全国連絡会共同代表)がコメント

利根川水系の八ッ場ダムは来年3月完成予定で10月1日から試験湛水が行われているが、10月12〜13日の台風19号により、貯水量が一挙に増加しました。八ッ場ダムの貯水量が急増したことで「台風19号では利根川の堤防が決壊寸前になったが、八ッ場ダムが利根川を救った」という話がネットで飛び交っています。しかし、それは事実に基づかないフェイクニュースに過ぎません。
 
<「八ッ場ダムが洪水から救った」はフェイク>
 
10月13日未明に利根川中流部の水位はかなり上昇し、加須市では避難勧告も出ましたが、中流部・栗橋地点の最高水位をみると、堤防高まで2・33mでした。決壊寸前という危機的な状況ではありません。国土交通省が行った八ッ場ダムの治水効果の計算結果では、大規模洪水では栗橋付近の最大流量削減率は約3%。それから推測すると本洪水における八ッ場ダムの栗橋地点での水位低減効果は17㎝程度です。したがって本洪水で八ッ場ダムがなく、水位が上がったとしても利根川中流部が氾濫する状況ではなかったわけです。
利根川の水位が本洪水でかなり上昇した理由の一つとして、適宜実施すべき河床掘削作業が十分に行われず、そのために利根川中流部の河床が上昇してきているという問題があります。国交省が定めている利根川河川整備計画に沿った河床面が維持されていれば、本洪水のピーク水位は70㎝程度下がっていたと推測されます。
下流に行くほど減衰していく八ッ場ダムの小さな治水効果を期待するよりも、河床掘削を適宜行って河床面の維持に努めることの方がはるかに重要だと言えます。
 
ニュース206号2面P-3
台風19号による降雨後の八ッ場ダム
(国土交通省ホームページより)
 
 

農業被害は深刻 牛・鶏への病気も心配
埼玉農民連関根耕太郎事務局長

台風19号により、10月17日現在、川越、坂戸、東松山市などで約160名が避難生活を続けています。県内では2000棟以上の住居で浸水被害があり、東松山市内の大型商業施設は1Fが浸水し、未だ営業の目途がたっていません。
 
農業被害も深刻です。農民連副会長の原さん(坂戸市)の所へ18日に視察に行きました。坂戸市に流れる越辺川から約1㎞の所にあるライスセンターは、決壊した越辺川の水が高さ2m超まで浸水しました。センターに保管してあったコメ(フレコンと呼ばれる1t袋)10袋が全て廃棄となり、また多くの機械も浸水。原さんは「ほとんどダメだろう。収入保険に加入しているから、ある程度は補填がきくだろうけど」と話しますが、収入保険は8割までの補填です。大まかに計算しても機械代だけで約1000万円の赤字です。「過去にも同じような浸水被害があったが、その時は1mの浸水だった。今回の台風はその倍で異常。毎日片付けに追われ疲れたよ。」と、気落ちした様子。11月には小麦の作付けが控えていますが、農地の水や泥を除去する必要があり、また今回水に浸かった機械が使用できない場合の購入費用など多くの問題を抱えています。
 
本庄市で米、イチゴを栽培する小賀野さんはイチゴのハウス15棟全てが浸水しました。深夜0時ごろに心配で様子を見に行くと川が決壊しており、「決壊した場所は、川がカーブする様に曲がっており、過去に何度かかさ上げするよう行政に要請していたが実現されなかった。今回の事で対策してくれれば」と、悔しさを滲ませます。
 
東松山市の国分牧場では牛舎が冠水。牛の足元まで水がきており「今後、牛への病気などの影響がないか心配だ」と国分さん。さいたま市の浅子幹夫さんの畑では近くを流れる芝川が氾濫し周辺の田んぼや農業用ハウス、鶏舎などが浸水しました。
県内ではコメ、ソバなどを始めブロッコリーや大根など多くの作物で浸水被害があり、日が経つにつれ被害の深刻さが浮かび上がっています。