民主県政の会ニュース173号

第173号 2017年1月1日

特定の大企業に偏った農業支援はやめよ
埼玉スマートアグリ事業

 12月定例会環境農林委員会で、予算執行が停止されていたトマトの水耕栽培の実証・研究事業(埼玉スマートアグリ事業)について、自民党が予算執行を容認する意向を示しました。同事業については、今年3月の委員会で、県内生産者がメリットを享受できるような県の対応がとられていないとして予算執行を認めない附帯決議がなされていました。
 そもそも、この事業は、国からの10億円の補助とイオン系企業の9億円の投資によって水耕栽培の最先端技術を活用したトマトの大規模ハウスをつくるものです。県は県農林総合センター(久喜市)にある4ヘクタールもの事業用地を整備し、固定資産税相当額で貸し出します。イオン系企業は、この事業で990トンものトマトの生産・出荷を予定しており、県内トマト農家からは価格下落への不安の声があがっています。また、実験ハウスは計画当初の一棟あたり1億4千万円もかかる1haの大規模施設から30aのものに縮小されましたが、中小規模のトマト農家にとって簡単に導入できるものではありません。
 日本共産党県議団は、県民の財産である県有地を格安で提供し、特定の企業のみを支援する大規模事業は認めらないとして、事業予算に一貫して反対してきました。耕作面積の大幅減少や後継者不足で危機に瀕する埼玉農業を建て直すには、家族経営を尊重しすべての農家を育成すべきであり、特定の大企業に偏った農業政策はやめるべきです。
(日本共産党県議団事務局・小久保剛志)
 
県農業技術センター周辺にトマト工場を計画(県ホームページ)
 
 

少数会派の質問時間大幅短縮
予算特別委員会の持ち時間、自公が一方的変更

 埼玉県議会12月定例会は12月22日に開かれた議会運営委員会で、予算特別委員会の部局別「審査持ち時間」が大幅に短縮されました。予算特別委員会は16年2月定例会から、知事への総括質疑が1回に縮められ知事答弁が認められない部局別審査に変更されました。今回はこれをさらに改悪し、各会派に一律10分を割り充てたうえで人数に応じて時間配分しました。その結果、自民党はこれまでより274分も増えましたが、公明52分、共産78分、改革92分減と少数会派ほど質問時間が削られました。埼玉県議会では、議会運営などへの自民党の横暴が顕著になっています。
 審議時間変更は自公の賛成多数で可決しました。12月議会閉会後、民進・共産・県民・無所属の各会派が、議長に議会改革特別委員会設置を申し入れました。
 
 

国や自治体はお金の使い方変えて
「教育や震災対策に予算を」新婦人が学校ウォッチング

 新婦人県本部所沢支部は11月に、市内6つの県立高校を訪問し校長などと懇談しました。懇談内容は教育費用の問題やエアコン・コンピューターなど施設の充実、防災対策などです。
 いま高校生の貧困化が深刻です。所沢市では生徒の約2割が就学支援金を受け、なかには9割が就学支援金を受けている学校もあります。経済的理由で退学せざる得ない生徒に、先生が親身なって相談し退学を免れたケースも。また多くの学校でいまだに和式トイレが使用されています。家庭で洋式トイレが当たり前なのにこれでは使いたくありません。高校は地震など災害時は避難場所になっており、お年寄りや体の悪い方でも使えるトイレが必要です。
 国や自治体は大型開発や施設建設に力を入れていますが、予算の使い方を子どもやお年寄りの切実な要求に応えられる方向に切り換えることが必要です。
 

県民が主人公を貫く施策こそ魅力ある県政を実現する
高知県視察で学んだこと

 1991年から4期勤めた橋本大二郎知事の取り組みを継承して3期目を迎えた尾崎正直県政。尾崎知事(自民公明推薦)は「人口の減少が県内市場の縮小を招き、若者がさらに県外に流出し、さらに人口減少が加速する」といった負の連鎖に正面から向き合い、経済活性化の中心施策が、平成21年に策定した「高知県産業振興計画」だといいます。
 そして今年スタートした第3期計画では、「『「地産外商」の取り組みをさらに強化し、その流れをより力強い「拡大再生産」の好循環につなげる』ことにより、第一次産業から第三次産業までの多様な仕事を創出し、若者が地域で働き続けられる土壌をつくっていくことをめざす」としています。

「地産外商」で産業・雇用の拡大再生産
 私たちは、共産党高知県議団との懇談の後、この計画の中核を担っている産業振興推進部の課長から取り組みの概要を聞きました。第3期のポイントは①各産業の取り組み継続発展のため、移住施策と連携した担い手育成による人材確保、②地元に残りたいと願う若者の就職先確保のため、第一次産業や観光などを核としてその周りにさまざまな産業を集積させる「地域産業クラスター」の創出、③地域の持続的発展に欠かせない新たな事業展開を可能にする、地域からの「起業」と「補助制度」などを含めた支援。の三つだといいます。
 その後訪問した、「ものづくり地産外商センター」「森林組合連合会」「農業担い手育成センター(窪川アグリ体験塾)」で、理事長をはじめさまざまな職員・スタッフが、「第3期産業振興計画」の実践について、自分の言葉で生き生きとその到達と今後の課題を語ってくれました。
 
職員を地域に配置しサポート
 大型公共事業や大企業の誘致ではない、県民の生活実態を直視し、県民が主人公という思想で県民に寄り添った自主的な地域発の取り組み。それを専門性を持つ県(公務)が職員を配置し、財政的裏づけを強化してしっかりサポートしていること。共産党の高知県議団をはじめ、お会いしたすべての団体の皆さんがこのような高知県政を評価し、我がこととして誇りを持って語る姿が印象的でした。埼玉県でも決してできないことではないという想いを秘めて帰路につきました。
 
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