民主県政の会ニュース194号

子育て、教育に影落とす格差と貧困
県の支援でくらしを支え

9月8日(土)午後、さいたま市の県民健康センターで県政シンポジウムが行われ、労組や市民団体、地方議員など約80人が参加しました。シンポジウムは子育てや子ども医療、教育・行政の役割など専門家の発言で課題を探りました。
 
<イデオロギーでなく市民の要求に寄り沿った政策を 9・8 県政シンポジウム>
 
シンポジストは金子貴美子埼玉保問協事務局長、白鳥勲彩の国子ども・若者支援ネット代表、須田健治前新座市長の3氏。コーディネーターは柴田泰彦特別代表が務め、各分野の現状や課題、新座市での行政経験などが報告されました。シンポジストの1回目の発言のあと参加者の質問に各氏が答え、2回目の発言でそれぞれの問題についてさらに深めました。
 
保育の現状を報告した金子氏は、いま国は保育所を増設するのではなく、認定保育園や預かり保育で待機児解消をすすめようとしていると指摘します。しかし職員の処遇改善がはかられなければ職員不足の常態化は避けられません。せっかく誇りと希望をもって保育の仕事に就いても、過重労働で心身とも疲弊し退職せざるを得ないのが現状だといいます。資格を持たない保育ママや準保育士を増やすのでなく、有資格者の増員こそ求められているはずだと強調しました。いま子どもたちの虫歯自体は少なくなっているが、一部には歯医者にかかれず重症化している子が増え、家庭の貧困が深刻な影響を及ぼしていると述べました。
 
貧困家庭の教育対策として県がすすめているのがアスポートセンター事業です。報告に立った白鳥氏は、いま7人に1人が貧困家庭の子どもといわれ、学力が低いのが統計的に示されていると指摘します。とくにひとり親世帯の貧困率は51%と深刻で、さらに貧困は連鎖すると強調。こうした子どもたちに寄り沿い学習意欲や学力を高めるのがアスポートの役割で、教員OBや学生ボランティアなどが参加しています。中学生対象校は県内63市町村に100教室以上あり1600人超が学んでいます。国の「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づいて運営されている事業ですが、まだまだ偏見も多く課題は多いと話します。
 
<市民要求優先で政策をすすめ>
 
7月2日の議会運営委員会ではこれら3つの請願について、木下議運委員長(自民)から「2月定例会で(各請願の)取り下げを求めるため継続審査としたが、本日まで取り下げがなされず不採択」とする提案がなされました。これには日本共産党の秋山文和県議が採択を求める意見を述べようとしましたが、他の自民委員から「(内容に入るべきではない)手続きの問題だから」と発言を制止され、採決が強行されました。秋山県議は請願に賛成しましたが、委員長の強行採決で不採択になりました。
自民党が押し通した原発再稼働を求める意見書に反するものは、門前払いで葬り去ろうということです。まさに議会制民主主義否定といえる横暴が続いており、県民の中に懸念が広がっています。埼玉県議会で過半数を占める自民党にNO!を突きつけるために、来年4月の埼玉県議会選挙で厳しい審判を下すことが必要です。
 
<特養ホーム予算凍結は解除>
 
須田氏はバブル崩壊後に市長に就任し、「イデオロギーでなく市民に寄り沿った市政運営」をめざして取り組んできたと強調しました。子ども医療費の高校生まで無料化や、校舎の耐震工事、トイレの改修、エアコン設置などを市民要求を優先して政策をすすめてきた結果、他市に先駆けて実現できたと述べました。
3氏が異口同音に強調したのは「県が予算を出してそれぞれの取り組みを支援すれば、住民のくらしを支えることは可能」ということでした。
県政シンポジウムは会場発言も交えながら、会の政策を豊かにするものとなりました。(次号から課題ごとに詳報します。)

80人が参加した県政シンポ
 

農大跡地のIHI売却 不安払拭されず
県民要求が高校のエアコン設置後押し
県議会9月定例会

 
埼玉県議会9月定例会が9月20日から10月12日の日程で行われています。
 
9月議会には、19年のラグビーワールドカップの開催地である熊谷市が、野外広告物の規制などを独自に行えるよう県の権限委譲をはかる条例など6件の条例や、約20億円増の18年度一般会計補正予算案など18議案が提出されています。
 
補正予算は普通教室にエアコンのない県立高校7校で、エアコン設置費用2億9458万円を計上するなどです。また上田知事は、鶴ヶ島市の農業大学跡地の一部(13・61㌶)を、最先端の民間航空機エンジンの新工場建設が目的だとするIHIに71億500万円で売却することを表明しました。知事は提案説明で「先端産業・次世代産業などの成長産業を集積し経済の好循環を図る」と強調しています。しかし本紙が前号(9/1付)で指摘したように、鶴ヶ島市は米軍が戦闘機エンジン開発地としている瑞穂工場(東京)と目と鼻の先です。依然として住民の不安は払しょくされていません。
 
<国保税、障害者雇用などで日本共産党が質問>
 
9月28日は日本共産党の秋山文和県議が一般質問に立ちました。秋山県議は国保税について、県民への負担増はやめ、とくに生活困窮者が安心して利用できる国保にするよう求めました。また社会問題化している障害者雇用の水増しが行われていないか質すとともに、問題の早急な解決を求めました。さらに岩槻市の県立小児医療センター跡地についても言及し、住民要求に応える施策の実現を求めました。
 

埼労連の自治体訪問
臨時・非常勤職員の賃上げなどもとめ懇談
希望持てる生活水準の保障を

 
埼玉県労働組合連合会(埼労連・伊藤稔議長)は、11月9日から16日まで、今年で16回目を迎える「2018全自治体訪問」(自治体キャラバン)を行います。
 
今年10月から県の最低賃金が時給898円に改訂されました。しかし臨時・非常勤職員の時給が旧来水準に止まっている自治体も少なくありません。キャラバンは公契約制度の改善などとともに、すべての自治体が臨時・非常勤職員の時給を1300円に引き上げること、また他の労働条件も正規職員との均等待遇を原則とするよう求めています。県の臨時・非常勤職員の中にも1000円に満たない時給で働いている方が少なくありません。地域の賃金相場に強い影響力を及ぼす自治体職員の賃金の引き上げは急務です。埼労連が2016年に行った最低生計費調査では、25歳男性で月額241、879円(一時金・税込、月173・8時間換算で時給1、392円)、30代4人世帯で499、064円(同、時給2、871円)です(左表)。時給1、300円の要求は十分根拠を持った数字です。低賃金労働者が増えれば消費購買力は上がらず地域経済は低迷します。アベノミクスは非正規と正社員との賃金格差を広げ、年収200万円にも満たない労働者が溢れています。これでは日本経済は増々疲弊します。埼玉県にも労働者が希望を持って働ける環境をつくることが求められています。
 
 
最低生計費調査結果世帯別一覧表(2017年4月埼労連発表)
 
調査年 2016年
対象モデル 25歳男性 30代4人世帯 40代4人世帯 50代4人世帯
居住面積(賃貸) 1K25㎡ 42.5㎡ 47.5㎡ 50㎡
食費 38,610 108,192 121,468 125,462
住居費 52,500 57,292 62,500 64,583
光熱・水道費 6,867 18,191 18,941 19,356
家具・家事用品費 4,781 18,356 19,150 20,161
被服・履物費 6,906 20,156 21,242 23,971
保健医療費 3,366 8,706 7,709 9,505
交通・通信費 19,635 38,210 38,747 49,752
教育費 0 26,986 37,486 128,724
教養娯楽費 20,225 45,663 32,429 28,193
その他(交際費等) 20,634 49,405 53,112 61,814
予備費(貯蓄等) 17,300 39,100 41,200 53,100
最低生計費計(税-社会保険抜き) 190,824 430,257 453,984 584,621
非消費支出(税・社会保険等) 51,055 68,807 85,319 99,281
最低生計費・月収(一時金・税込み) 241,879 499,064 539,303 683,902
最低生計費・年収(一時金・税込み) 2,902,548 5,988,768 6,471,636 8,206,824
最低生計費時給額(173.8時間換算) 1,392 2,871 3,103 3,935
最低生計費時給額(150時間換算) 1,613 3,327 3,595 4,559
埼玉県最低賃金額 845(2016年10月)

※1ヵ月あたりの金額(単位:円)