民主県政の会ニュース196号

【県職員】
人手不足、経験継承に悩む、長時間労働も県政要求共同行動で県と懇談

11月9日(金)さいたま市内で2018年県政要求共同行動が行われ、午前中の合同決起集会、午後の分野別懇談(県政全般、社会保障)に、県内の労組・市民団体から、のべ124人が参加しました。
 
県政全般の懇談では伊藤稔代表委員(埼労連議長)が冒頭あいさつし、「経済効率一辺倒で福祉や教育は語れない」と述べ、職員を減らして仕事の効率化をはかるような県政運営に釘を刺しました。
 
懇談では自治労連の代表が県職員の処遇について問題提起しました。組合が県内自治体職員8千人に配布したアンケートに420人の県職員が回答したと紹介。そこでは77%が「人手不足、職員不足」を訴え、技術や経験が継承されないと悩んでいると回答しています。しかも残業時間の過少申告は当たり前で80時間(厚労省指針のイエローカードライン)超えもざらではないといいます。自治労連の代表は「県が労働時間管理と規制をしっかり行い、職員を確保して過重労働をさせないよう」求めました。また埼商連の代表は中小商工業者のくらしに深刻な影響を与えている、違法な税の取り立てや消費税増税による負担増を止めるよう求めました。
 
<県議会12月定例会が3日に開会>
 
埼玉県議会12月定例会が12月3日開会します。
12月議会では、がんセンター(伊奈町)や小児医療センター(さいたま市)など県立4病院一体の独立行政法人化などが審議されます。職員の仕事と雇用に大きな影響を与えることはもちろん、利用者の負担が増えるのではとの懸念も広がっており、注視する必要があります。
 
20181201
あいさつする伊藤代表委員
 
 

日本を代表する大企業「ホンダ」は住民に寄り添ってCSRを果たせ❷
柴田泰彦 民主県政の会特別代表

ホンダ狭山工場閉鎖問題でのアンケートには、多くの声が寄せられました(前号の続き)。
②製造品出荷額と労働者の減少について。
平成28年度現在、狭山市の全製造品出荷額は4610億円です。そこに働く労働者は5838人です。出荷額の55%、労働者の34・9%が「輸送機械器具製造業」関連。ホンダの閉鎖で狭山市の出荷額はほぼ半減し、労働者の3割強が雇用を失います。こうしたことから狭山市は、工業都市としてのイメージ低下、災害時における応援協力への影響、市主催のイベント等への影響を懸念しています。
 
<関係事業所の8割が経営規模の縮小・廃業を心配>
 
また「地域社会への影響」として、市内のホンダ関連事業所等の売上減少や工場周辺の賃貸不動産への影響などを指摘しています。アンケートに回答した製造業者は249事業所です。狭山工場との取引関係があるのは24事業所でした。当然この事業所が直接の影響を受けることになります。また工場近隣の製造業以外の事業所からの回答は169件でした。その特徴は次の通りです。
 
①製造業について。事業所の移転や閉鎖は状況次第の7件を含め19件79・2%。また売上減少は9件37・5%。状況次第の9件を含め、22件91・6%が生産規模の縮小を考えています。
 
②製造業以外では、卸・小売業、不動産業、宿泊・飲食・サービス業など近隣の169件に聞きました。狭山工場関連の売り上げがあるのは84件49・7%です。こちらも工場撤退に伴い、経営規模の縮小や移転・廃止などを懸念する事業所がおよそ20%程度あります。
(次号に続く)
 
 

貧困と教育の格差が拡大
広がるアスポートセンターの活動
9・8県政シンポジウムの発言から
彩の国子ども・若者支援ネット代表 白鳥 勲さん

 
アスポートセンターについてお話します。
子ども達に対して行政は生活保護、就学援助、また一人親世帯の児童扶養手当版で対応します。私たちは、それらの世帯の小中高校生の家を訪問して、不登校なら話し合ったり一緒に散歩したり、著しく勉強が遅れていれば一緒に勉強したりしています。年1、200軒ほど訪問して、子ども達にほぼマンツーマンで補講の学習教室をしています。教える大学生のボランティアや元教員などが200人。
 
支援費は国が2分の1、県が2分の1、ほかに各市で困窮者自立支援法に基づく学習支援事業という形で事業を行っています。日本の貧困問題は、生活や子どもの学力など想像を超えて「底ぬけ」状況にあります。
 
<貧困は子どもの生活習慣や学力に連動する>

子どもの貧困は世帯の貧困です。4人家族で年収200万円の生活です。月18〜19万円。これが7人に1人の割合でいます。これらの世帯では5万や10万円の急な出費が出せません。私が勤めていた学校では、積立金が払えないことが原因で退学する生徒がいました。また世帯所得が低いと、子どもの学力も低い傾向があります。小6と中3の全国学力テストの結果は、ほぼ偏差値と生活水準に比例しています。それらの子が不登校やいじめを受ける割合が高い。貧困生活の子どもたちは塾に行けないし、少し難しいと親にも聞けず学力格差が広がっていきます。また高等教育を受ける機会が少ない。とくに深刻なのは一人親世帯です。家庭訪問すると5〜6割はシングルマザー、シングルファーザー世帯です。これらの貧困は世代に連鎖していきます。
 
子どもが学校に行く際に何が準備してあれば自信をもって授業が受けられるか聞くと、身だしなみや宿題、連絡帳が整っていること。「いってらっしゃい」という親がいること、腹が満たされていることです。保護世帯の4割は朝食を食べず、「いってらっしゃい」という親がいない。いま緊急に必要な取り組みは、貧しい子どもたちの世帯の所得改善と不利な状態に置かれた子どもたちの学習到達の補助、健康的な生活習慣を支援するなどです。子ども達にとって大切なことは、自分が温かく見守られていることと公平性です。
 
<地域の運動と国や県、自治体の支援さらに広げ>
 
2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができました。子どもの将来が生まれ育った環境に左右されないよう貧困状態にある子どもの環境整備、教育の機会均等、子どもの貧困対策を総合的に推進するため、県や市町村に「都道府県総合貧困対策計画」を立てさせています。貧困世帯の所得改善には最賃の引き上げが必要ですが、とりあえず医療費を18歳まで無料化することによって、どれだけの子どもが気兼ねなく医者にかかれるか具体化するなどです。例えば新座市ではすでに実践されています。また一人でも多く就学援助を受けられるようにする。就学援助の枠を生活保護受給者の1・3倍にするだけで、多くの子どもが給食費で悩まないで済みます。これが子どもにとっては温かい「社会は見捨てたもんじゃないな」という思いを持つことになります。
 
埼玉県では、県の教職員をはじめ新婦人など地元の力が支えています。なんとか子ども達のフォローができる、貧困世帯のフォローができることがこの8年間で見通せました。今後はこれをどう広げるかということが課題です。(文責・編集部)

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児童の正答率と家庭の世帯年収(文科省ホームページより)