民主県政の会ニュース224号

コロナ追加対策重点に補正予算組まれる―5月臨時会
医師、看護師派遣自治体に補助金 酒類提供自粛店に協力金などコロナ対策拡大

埼玉で4月20日から出されていた、新型コロナ特措法に基づくまん延防止等重点措置が5月31日まで延長されたことをうけて、県は5月11日から始まった臨時議会に272億円余の一般会計補正予算案を提出しました。補正予算は営業時間短縮要請協力金や、大型商業施設への感染防止対策協力金、県や市町村のワクチン集団接種の医療従事者確保に対する助成金などに充てます。

共産党が「県の接種会場を増やせ」と要求

補正予算(第4号)は、時間外・休日に、集団接種会場に医療従事者を派遣した医療機関へ財政支援を行う市町村に対し、上限額1人1時間あたり医師・7550円、同・看護師等2760円補助する経費に6億4千万円余を充てます。また県の高齢者ワクチン集団接種会場として県浦和合同庁舎を確保、1日700人を受け入れ、モデルナ社製のワクチンを使用します。接種期間は6月1日から7月31日まで。医師等は県立小児医療センターから派遣します。
県の保険医療福祉委員会では日本共産党の村岡正嗣県議が、高齢者のワクチン接種が大幅に遅れていることに関わり「県の接種センターが1ヵ所では少なすぎる。県立病院に近い地域でせめてもう1ヵ所設置すべき」ともとめました。その後、18日の記者会見で大野知事は市町村に影響が出ない形で医療従事者を確保できれば、接種会場を増やす考えを示しました。また村岡県議は医療従事者の接種が遅れており、急いで完了するよう質しました。

飲食店・大型商業施設の時短に協力金

また12日?31日までの20日間、営業時間短縮要請に応じた飲食店に支給する協力金として、総額200億1千万円を計上しました。まん延防止等重点措置区域15市町では、飲食店などに午前5時から午後8時まで、酒類提供の終日自粛を要請しています。要請に応じた店には、売上高に応じ1店舗当たり日額4?10万円、または売り上げ減少額に対応して、最大20万円の協力金を支給します。重点措置区域外への要請も継続するとしています。一方ショッピングモールなど大型商業施設への短縮要請に伴う協力金として約60億8千万円を充てました。

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東京オリ・パラ開催に不安
大野知事「状況を冷静に判断すべき」

東京五輪・パラリンピックの開催をめぐり不安の声が広がっています。大野元裕県知事は18日の記者会見で「新型コロナウイルスの感染が収束しない場合東京五輪・パラリンピックの開催中止もやむを得ない」との認識を示しました。そして国や東京都の対応にも「感染状況を見て冷静に判断してほしい」と釘を刺しました。県内には埼玉スタジアム(サッカー)やスーパーアリーナ(バスケットボール)などが競技会場に予定されています。観客や選手、スタッフの安全や安心を確保し、誰もが心から喜べる開催が可能な状況と言えるのでしょうか。

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さいたま市長選

誰れひとり取り残さない
前島英男氏 健闘も及ばず

5月23日投開票で行われたさいたま市長選挙は「みんなのさいたま市をつくる会」から立候補した前島英男氏(無所属新・共産党支持)が現職と一騎打ちでたたかいました。前島候補は前回市長選の1・6倍にあたる8万6404票を得ましたが及ばず、清水勇人氏(21万6768票)が当選しました。前島氏は元教員で埼労連副議長やさいたま地区労議長などを歴任。
前島候補は「コロナ禍から誰ひとり取り残さない」を柱に、「ワクチン接種とPCR検査の拡充」「市庁舎移転よりコロナ対策を」などの政策を訴え、SNSを発信して新しい選挙に挑戦しました。

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埼玉県立4病院が独法化に―
コロナ禍の中、県民のいのちが守れるのか

埼玉県社会保障推進協議会 川嶋 芳男 事務局長

今年4月1日から「地方独立行法人埼玉県立病院機構」の運営が開始されました。埼玉県が100%出資し設立された法人です。これまで埼玉県が運営する5つの病院の内、県立総合リハビリテーションセンター(上尾市)を除く4つの病院を運営します。
この独法化は、埼玉県議会2018年2月定例会の予算特別委員会で自民党県議団が提出した付帯決議からはじまり、同年6月に「県立病院在り方委員会」が設置され、11月には「地方独立行政法人化」が望ましいとの報告書がまとめられ、19年2月定例会では上田知事(当時)が法人化を表明するなど短期間で決定しました。付帯決議には「県立4病院も含め、多額の県税を投入しているという意識が乏しい」「独立行政法人化を視野に経営健全化を求める」としていました。このように、地方独立行政法人制度は、①人事、給与など独自に定められる、②予算単年度主義の概念がなくなり、機動性や弾力性ある契約や経済性の実現などがメリットとして挙げられています。しかし、これが県立病院に本当に求められていることでしょうか。

経済優先では公的病院の役割果たせない

憲法25条のもとで、医療法第一条は「医療を受ける者の利益の保護」「良質かつ適切な医療」の提供をはかり「国民の健康の保持に寄与すること」を目的にし、第一条の三で「国及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない」としています。県立病院が効率的でなければならないという根拠は見当たりません。
地方独立行政法人は、この間の「公立病院改革」によって誘導されてきた政策の一環であり県直営化から「民営化」への中間的形態です。県直営では不要だった利益配当や役員報酬が、民営化されれば常に必要となります。医療機器などの物的経費は経営形態が違ってもほとんど変わらないでしょう。
したがって、利益を生むためには人的経費の削減が不可避となります。そのためには、あらゆる職種で非正規雇用が拡大する懸念があります。同時に診療報酬以外の分野(個室料金や診断書料金などの値上げ)での利益追求がはじまるでしょう。つまり、第1に県民本位の医療が後退するのではないかという懸念です。県条例改正を必要とすることなく、小人数の理事会で県民負担増を強いる料金改定などを決めることができるからです。第2に、県議会などでは今後は一定の議論しかできません。職員の採用や労働条件改善などの運営課題は理事長、副理事長と4人の理事で構成する理事会次第となりました。

利用者・患者の声を生かす仕組みづくりこそ

私たち埼玉社保協は、毎年11月の県政要求共同行動や県立病院問題での懇談も行い、経営効率化ではなく県民本位の医療を行う直営での病院運営を継続するよう要請してきました。
埼玉の県立病院には総合病院がありません。小児医療センター(さいたま市)、がんセンター(伊奈町)、循環器・呼吸器病センター(熊谷市)、精神医療センター(伊奈町)のように専門特化していることが特徴です。
4病院で職員総数は2514人、1日当り外来患者が1905人利用され病床利用率は79%(2019年)です。特に、さいたま新都心に移転した小児医療センターは1日870人が利用され、周辺の交通渋滞や駐車場問題が発生し喘息発作などで急変した場合に受診できないとの不安の声が出されています。
2019年度は県財政から県立病院へ127億円の繰入を行っていました。県や県議会が今後も県立病院をしっかり支える覚悟が求められています。県立病院も県民や利用者の声聞く場を設置すべきです。
(かわしま よしお)

小児医療センター(さいたま市)