民主県政の会ニュース228号

新型コロナ

自宅療養中の死亡相次ぐ
保健所と支援センター連絡ミス

業務委託に問題は…

新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中に亡くなる方が急激に増えています。感染者の検査や入院、治療の迅速化が求められる中で、医療機関や医師・看護師、病床の不足などから、患者が必要な医療を受けられない事案が多発しています。

埼玉県の自宅療養中の患者が亡くなる事例が相次ぎ、8月以降発表分だけでも5件にのぼっています。
さいたま市では60台の男性が、「宿泊・自宅療養者支援センター」による自動音声の健康観察や、看護師の直接電話にも応答しない状況が続いた後に死亡が確認されました。また9月上旬には自宅療養中だった春日部市の50台の男性が亡くなりました。男性はさいたま市の保健所から居住地の春日部保健所へ健康観察業務が移管されましたが保健所の事務的ミスで移管後健康観察が行われないまま亡くなったのです。
言うまでもなく新型コロナウイルス感染者の検査・入院などに関する対応は保健所を中心に行われています。しかし感染拡大で医療施設も医師・看護師不足も限界に達しています。
埼玉県でも症状の程度によって患者の自宅・宿泊施設での療養を認めています。業務を委託された支援センターは、患者の健康観察や医療施設との連絡・調整などにあたっています。当然、いま支援センターも手いっぱいの状態です。さらに支援センターと保健所では状況認識にズレもあり、連絡ミスが生じやすくなっていました。

保健所を増やし、医師と看護師の増員を

保健所の逼迫は「いつ事故があっても不思議ではない」と幾度となく指摘されてきました。今日の感染症拡大と対応の不十分さは、国や過去の埼玉県が保健所を減らし、医師・看護師の増員を放置してきたことが大きな要因のひとつです。
春日部市の男性の死亡事故について、大野元裕知事は9月7日の定例記者会見で「健康観察のルールに従ったチェックが正しく働いていなかった」と陳謝しました。9月24日開会の埼玉県議会では、これら新型コロナウイルス感染対策について真剣な議論が期待されます。

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小川町メガソーラーの事業化困難
知事が表明

県中央部に位置する小川町に建設予定の大規模太陽光発電施設・メガソーラーの事業化が中止に追い込まれました。
メガソーラーは、大野元裕現知事以前から県と民間業者によって進められてきたプロジェクト。町の丘陵地約86㌶(東京ドームの約18倍)に出力3万9千6百kwの太陽光発電所を建設する計画でした。
事業地整備に必要な盛り土量は72万立方㍍に上り、7月に静岡県熱海市で起きた土石流発生地点の盛り土量の約10倍になるといいます。
しかも外部から残土を搬入するため、大型ダンプなど1日157台(往復314台)が、小・中学校の通学路を連なって走行することになります。地元では土地開発で、絶滅が危惧されているサシバやミゾゴイなど野鳥の営巣を壊すことへの懸念も広がっています。
またホタルが住み着く自然豊かな棚田を守る運動をすすめている方々も多くが計画の中止を求めてきました。大野知事は、「地権者の同意が得られない事業の事業化は困難」としており、県議会で県の姿勢が示されるものと思われます。

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10月1日から
最賃956円に引き上げ
埼労連は1500円要求

10月1日から最低賃金額が改定され、埼玉県は時給956円になります。政府は新型コロナウイルス感染症の影響で賃金格差が広がる中、是正には最賃引き上げが不可欠(経済財政運営の指針=骨太方針)だとしています。その結果、最低賃金引き上げ額の目安を決定する今年の中央最低賃金審議会(中賃)では、過去最高の28円が答申されました。

最低賃金は労働者をその金額以下で働かすと法律違反になり事業者が罰せられる賃金額で、日本では時間額で表示されています。中賃の答申を受け各都道府県の最賃審議会がその地方の最賃について審議・決定します。埼玉県は8月23日、中賃の目安どおり28円を引き上げ、時間額956円を決定しました。これは、全労連・埼労連が「最賃はすべての労働者の生活向上に関わる課題」として運動を積み重ねてきた結果と言えるものです。しかしこの最賃は「普通のくらしを支える」のに十分と言えるのでしょうか。

標準生計費は東京と埼玉で変わらず

埼玉県労働組合連合会(埼労連・新島善弘議長)は、最賃闘争を最重要課題として運動をすすめてきました。
毎年県内各地の求人紙・誌で「募集金額」(時給)を調べ、また実生活にもとづく衣・食・住の経費を「標準生計費」として算出、それに必要な賃金額と時給を明らかにしています。埼玉県と東京都では、生計費は変わらないのに最賃額に差があるのは歴然です(表)。まさに「最賃時給1500円」は正当であり全国一律最賃こそ求められます。
最低賃金の大幅引き上げと「全国一律最賃制度」の確立は、労働組合だけの運動ではありません。埼労連は今年6月自民党の務台俊介衆議院議員を招いて「最賃シンポ」を開催。与党の中にも、日本経済の健全な発展のために全国一律最賃制と最賃引き上げが必要の声が紹介されました。県内の商工会や企業の中にも「東京との格差は困る」と考える方は多く、埼玉県もこうした動向をつかみ労働・産業政策に反映させることが求められています。

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全国一律で格差解消
加藤靖 埼労連最賃闘争担当幹事

埼玉地方最低賃金審議会は8月5日の審議会で、昨年の928円から28円引き上げる「時給956円」を答申しました。今年の審議会はA〜Dの4ランクすべて28円の目安が示され、使用者側委員から強い懸念が示される中、公労使三者の合意として10月1日実施に間に合う日程で有額回答をしたことは一定の評価ができます。
しかし、結果として今回の引き上げ額では、昨年全国加重平均で1円しか上がらなかった分をカバーする水準には程遠く、生計費原則の視点からも到底納得のできるものでなく、東京との差も依然として月額でおよそ15000円もあります。埼労連が意見陳述で主張した労働人口の流出の解消という点からも、納得できるものではりません。また審議会の運営でも、金額の審議(専門部会)については依然として非公開とされており課題を残しました。
引き続き最賃の大幅引き上げと全国一律最賃制度の実現をめざし、まずは改定される新しい最賃額の周知が重要です。