ダムの治水効果は期待薄 嶋津 暉之氏(水源開発問題全国連絡会共同代表)がコメント

利根川水系の八ッ場ダムは来年3月完成予定で10月1日から試験湛水が行われているが、10月12〜13日の台風19号により、貯水量が一挙に増加しました。八ッ場ダムの貯水量が急増したことで「台風19号では利根川の堤防が決壊寸前になったが、八ッ場ダムが利根川を救った」という話がネットで飛び交っています。しかし、それは事実に基づかないフェイクニュースに過ぎません。
 
<「八ッ場ダムが洪水から救った」はフェイク>
 
10月13日未明に利根川中流部の水位はかなり上昇し、加須市では避難勧告も出ましたが、中流部・栗橋地点の最高水位をみると、堤防高まで2・33mでした。決壊寸前という危機的な状況ではありません。国土交通省が行った八ッ場ダムの治水効果の計算結果では、大規模洪水では栗橋付近の最大流量削減率は約3%。それから推測すると本洪水における八ッ場ダムの栗橋地点での水位低減効果は17㎝程度です。したがって本洪水で八ッ場ダムがなく、水位が上がったとしても利根川中流部が氾濫する状況ではなかったわけです。
利根川の水位が本洪水でかなり上昇した理由の一つとして、適宜実施すべき河床掘削作業が十分に行われず、そのために利根川中流部の河床が上昇してきているという問題があります。国交省が定めている利根川河川整備計画に沿った河床面が維持されていれば、本洪水のピーク水位は70㎝程度下がっていたと推測されます。
下流に行くほど減衰していく八ッ場ダムの小さな治水効果を期待するよりも、河床掘削を適宜行って河床面の維持に努めることの方がはるかに重要だと言えます。
 
ニュース206号2面P-3
台風19号による降雨後の八ッ場ダム
(国土交通省ホームページより)