貧困と教育の格差が拡大 広がるアスポートセンターの活動 9・8県政シンポジウムの発言から 彩の国子ども・若者支援ネット代表 白鳥 勲さん

アスポートセンターについてお話します。
子ども達に対して行政は生活保護、就学援助、また一人親世帯の児童扶養手当版で対応します。私たちは、それらの世帯の小中高校生の家を訪問して、不登校なら話し合ったり一緒に散歩したり、著しく勉強が遅れていれば一緒に勉強したりしています。年1、200軒ほど訪問して、子ども達にほぼマンツーマンで補講の学習教室をしています。教える大学生のボランティアや元教員などが200人。
 
支援費は国が2分の1、県が2分の1、ほかに各市で困窮者自立支援法に基づく学習支援事業という形で事業を行っています。日本の貧困問題は、生活や子どもの学力など想像を超えて「底ぬけ」状況にあります。
 
<貧困は子どもの生活習慣や学力に連動する>
 
子どもの貧困は世帯の貧困です。4人家族で年収200万円の生活です。月18〜19万円。これが7人に1人の割合でいます。これらの世帯では5万や10万円の急な出費が出せません。私が勤めていた学校では、積立金が払えないことが原因で退学する生徒がいました。また世帯所得が低いと、子どもの学力も低い傾向があります。小6と中3の全国学力テストの結果は、ほぼ偏差値と生活水準に比例しています。それらの子が不登校やいじめを受ける割合が高い。貧困生活の子どもたちは塾に行けないし、少し難しいと親にも聞けず学力格差が広がっていきます。また高等教育を受ける機会が少ない。とくに深刻なのは一人親世帯です。家庭訪問すると5〜6割はシングルマザー、シングルファーザー世帯です。これらの貧困は世代に連鎖していきます。
 
子どもが学校に行く際に何が準備してあれば自信をもって授業が受けられるか聞くと、身だしなみや宿題、連絡帳が整っていること。「いってらっしゃい」という親がいること、腹が満たされていることです。保護世帯の4割は朝食を食べず、「いってらっしゃい」という親がいない。いま緊急に必要な取り組みは、貧しい子どもたちの世帯の所得改善と不利な状態に置かれた子どもたちの学習到達の補助、健康的な生活習慣を支援するなどです。子ども達にとって大切なことは、自分が温かく見守られていることと公平性です。
 
<地域の運動と国や県、自治体の支援さらに広げ>
 
2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができました。子どもの将来が生まれ育った環境に左右されないよう貧困状態にある子どもの環境整備、教育の機会均等、子どもの貧困対策を総合的に推進するため、県や市町村に「都道府県総合貧困対策計画」を立てさせています。貧困世帯の所得改善には最賃の引き上げが必要ですが、とりあえず医療費を18歳まで無料化することによって、どれだけの子どもが気兼ねなく医者にかかれるか具体化するなどです。例えば新座市ではすでに実践されています。また一人でも多く就学援助を受けられるようにする。就学援助の枠を生活保護受給者の1・3倍にするだけで、多くの子どもが給食費で悩まないで済みます。これが子どもにとっては温かい「社会は見捨てたもんじゃないな」という思いを持つことになります。
 
埼玉県では、県の教職員をはじめ新婦人など地元の力が支えています。なんとか子ども達のフォローができる、貧困世帯のフォローができることがこの8年間で見通せました。今後はこれをどう広げるかということが課題です。(文責・編集部)
 
20181201_02
児童の正答率と家庭の世帯年収(文科省ホームページより)