20年度県国保運営協議会 法定外繰入の減額解消広げ、保険税率統一など問題点も 埼玉県社会保障推進協議会 川嶋芳男事務局長

埼玉県と市町村が共同で行っている国民健康保険組合の運営に関する重要事項を審議する令和2年度「第1回埼玉県国民健康保険運営協議会」が、6月11日さいたま市内で開催され、埼玉社保協の川嶋芳男事務局長が傍聴しました。協議会の様子などを川嶋事務局長に解説していただきました。

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新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が発出されたことにより、4月に予定され延期となっていた埼玉県国保運営協議会が6月11日に開かれました。新年度の協議会では委員の変更があり、日本共産党県議団の秋山文和県議から秋山もえ県議に交代しました。

今年の国保運営協議会は、国保運営方針の改定が大きな課題となっていて、会議開催が約2か月遅れた影響により、今年度の改定スケジュールに影響が出ています。大きく日程が変わるのは協議会の審議日程で、県民コメント(パブリックコメント)を当初の予定どおり8月に実施するために、7月中に議論が尽くされるよう日程が検討されました。次回は7月16日の開催が決まりましたが、場合により7月中にさらに開かれる可能性があります。

今回の協議会は、会議時間が1時間しか設定されていませんので県側からの提案説明に終始し、質疑の時間はほとんどありませんでした。議題は
①埼玉県国保運営方針(第2期)原案について、
②2020年度の埼玉県国保事業特別会計予算について、
③2020年度保険者努力支援制度の結果、
でした。

県国保運営方針は6年間の計画でしたが、前半の3年間を第1期とし18年度(平成30)から20年度(令和2)まで、翌年度以降の計画を見直し第2期とし、21年度(令和3)から23年度(令和5)についても目標が設定されることになりました。

県の運営方針改定「改悪」提案もあり

この計画の見直しについては昨年から政府「骨太方針」や厚労省の審議会などから盛んに意見が交わされてきました。その意見を集約する形で、先月5月8日付で厚労省保険局長から「都道府県国民健康保険運営方針策定要領」が発表されています。この策定要領にそって埼玉県側も改定案を作成しているものと予想しましたが、いくつか国以上に「改悪」する提案が含まれていました。特に2つ問題点があります。第1は、市町村の一般会計から国保医療課特別会計への「法定外繰入」についてです。国は①「決算補填目的等」と②「決算補填目的等以外の目的」に分類、策定要領で①の決算補填目的の繰入の減額、解消の実行を迫っています。ところが、埼玉県の説明では①も②も「減額、解消」をめざすべき目標だと提案しました。憲法の地方自治の本旨から逸脱する考え方ではないでしょうか。

第2は、国は国保税(料)の全県統一に向けた議論を前進させるため、当面は「二次医療圏ごとに市町村間の検討」を求めています。しかし県は「埼玉方針」で県内統一保険税率の設定をめざすと提案しています。そもそも第1期計画では「当面は統一の保険税水準としません」としていたものを2年で方針を大きく転換しようとしています。さらに心配なことは、「国保税の全県統一」=「保険税額の引き上げ」を前提に提案していることです。秋山もえ議員が統一による影響を質問したところ「急に上がらないように」計画的に引き上げていくというのです。引上げが前提の提案です。コロナ感染の影響で休業を余儀なくされ大きく収入が減少している事態が進行しているのです。現状を直視するなら、国保運営方針の改定は、今年度は中止し延期すべきです。

コロナによる地域医療の疲弊を直視すべき

国保の運営では小鹿野町は国保病院の運営も行っています。医療提供体制にも責任を負うのが国保です。県は地域医療が疲弊している現状を直視しているのでしょうか、たいへん疑問に思いました。

次回の会議で本格的な議論が行われます。私たち埼玉社保協でも専門部会である国保部会を設置して検討を進める事にし、できるだけ早く私たちの提言をまとめたいと考えています。
(かわしま よしお)

20年度県国保運営協議会
協議会の審議の様子